公証人役場での、公正証書遺言書の作成には、二人の立ち合い人が必要です。

遺言者が、聾啞者で公証人の読み上げる言葉が聞き取れない人、認知症で理解できない人は公正証書遺言書を作成出来ません。

公証人役場では、遺言者が相続開始して被相続人となってから、生存しているとして120歳まで保管してくれます。

また、遺言者が体の不自由な場合等出向くことのできない人には公証人は出張もしてくれます。

戦前までは、家督相続といって長男が相続する制度であったが、近年は財産の分割で揉め事が多く発生するため、家督相続でも良いのではないかと思うときもあります。

法定相続分とは、裁判基準と言われますが、分割で訴訟になった場合には裁判所は法定相続分で分割するという基準であって、権利があると勘違いしている人が多いのではないでしょうか。

被相続人が農業、事業をしている場合には、他の法定相続人に土地まで分割してしまうと、継続が不可能となります。たわけ者とは、田を分けて争いをして土地の利用価値がなくなる様な相続人を、田分者という意味の言葉です。

現代は同族会社の場合の事業承継の株式を、事業承継者以外に分割されて会社の存続が危ぶまれるケースが多く発生しているのでも、会社の承継者には、生前の株式譲渡、贈与、遺言書による相続、遺贈をするように進言しています。

世の中には、配偶者、子供、兄弟姉妹、甥名、両親となる、法定相続人が存在しない人がかなり多いのです。このような人は、相続財産は国に帰属することとなるので、自分の意志で特定の団体等に遺贈する旨の遺言書の作成を勧めますが、なかなか自分は死ぬという認識がないようで、決断できなく進みません。

遺言書の作成で、法定相続人が存在しない人、相続税の軽減のためにユニセフ、公共機関、特定法人へ遺贈も多くあります。

事件その1

会社の事業承継の件で、憂慮していた経営者から、相談のためご自宅に呼ばれテーブルの指定された場所に座り会話を始めてしばらくすると、暑い日にも関わらず背中がゾクゾクと震えがするくらい寒さを感じてたのです。

振り向くと、仏壇がある事に気が付きました。仏壇を背中にするとは、失礼なことをしたと思い、いつも数珠は鞄に入っているので、振り向いて手を合わせました。

これは、亡くなった父が私に会社の事業承継よろしく頼むとお願いしていると感じました。

この会社は、ご夫婦で九州から出て一代で築いた会社でしたが、父は亡くなり仏壇に入っていたのですが、母は兄弟がこの会社に就職していたのですが、弟があまり働かず、会社の事業承継も含めた兄弟の仲を心配していたのです。母としては、兄に会社を事業承継者になってもらいたいと願っていました。

母は全株式を夫から相続していたが、株式は遺言書で兄に相続させなければ、会社の事業承継はうまくいかなくなりますと伝えました。遺言書の内容は全財産を、長男の兄に相続させる内容にしなければなりませんでした。

時間が経過しているうちに母は老人ホームに入っていたので、立会人は私で公証人役場に来てもらうこととして進める事となったが、弟の夫婦が、老人ホームで遺言書を作成されないように見張っているかと思われるくらいの環境でしたので、公証人には夕方に来てもらいました。

もし、私署遺言書となると、母には認知症を発生していませんでしたが、認知症で私署遺言書の無効の訴訟されることも考えられたので、公正証書遺言書にこだわりました。

母が公正証書遺言書の作成時に自署押印のために自分の名前が書けるように、練習しなければならないくらい、体の衰えがありましたが、積極的に公正証書遺言書の作成に協力してくれました。

公正証書遺言書を作成して、間もなく亡くなり相続が開始しました。

三人兄弟でしたが、兄に対して遺留分減殺請求権(現在は「遺留分侵害額請求権」という)を弟と妹は提訴してきました。でも、会社の自社株は、事業承継者の兄が承継したので、会社は存続できました。

法定相続分の三分の一の二分の一の六分の一は金銭で分割することで和解はしました。

事件その2

私が立ち会った、公正証書遺言書ですが、全財産を公益法人に遺贈するという内容のものです。この公正証書遺言書での遺言執行者は私が指定されています。

法定相続人は離婚していたので、前の配偶者に相続人ではありませんでしたが、実子は二人いたので、もし遺留分減殺請求されたら、公益法人は応じるという内容です。

相続開始した場合には、遺言執行者に就職したという内容の文書の内容証明を発送しなければならないので、いまから実子の住所を確認しておかなければなりません。

 でも、疎遠になっている実子が財産を相続しなくても相続税の申告時の基礎控除、申告義務者となります。

事件その3

前妻との間に実子はいるのですが、前妻はすでに亡くなっており、実子が行方不明でした。生前に失踪宣告の手続き中に相続開始することも考えられ、また相続開始後に法定相続人が行方不明で失踪宣告の申し立てから、失踪宣告を受けるまでに時間がかかると、分割協議書の作成は不可能となり預金は凍結ロックされ預金解約、有価証券の解約、不動産移転登記もできなくなります。

公正証書遺言書を作成しなければ、現在の配偶者と実子は相続の預金解約、有価証券解約、不動産移転登記等ができないことが想像できたので公正証書遺言書の作成をする事となり私は立会人、遺言執行者となっています。

事件その4

遺言者は、法定相続人が存在しないこともあり、自ら公正証書遺言書を作成していたのですが、内容は市役所の教育関係に遺贈するというものですが、遺言執行者、財産の整理も私に託しているものです。もちろん原本の公正証書遺言書は事務所で保管しております。

 入居している施設の方から、本人の様態が思わしくないので、呼び出しがあり、打ち合わせをしてきたばかりでした。

事件その5

会社の事業承継者に継がせたい者以外に、株式を所有されると、会社の経営に支障をきたすので遺言書の作成を以前から提言していました。

公正証書遺言書作成するのには、公証人役場が遠方であるので、私署遺言書だけでも、事業承継の問題もあるので、早めに作成しなければならない状態であったので、私署遺言書の文書の原稿は作成し、残しておりました。相続開始したので、家庭裁判所の検認も終わりましたが、他の法定相続人から筆跡が違うと訴訟を起されている事件であるが、筆跡は被相続人のもので間違いありませんが、少しでも遺留分減殺請求をしてプレッシャーをかけて、財産をもらえるように和解したい魂胆なのです。

この遺留分減殺請求をしている、法定相続人は生前に「相続時精算課税制度」を利用して贈与を受けている事を、相続税申告書が申告できる状態の、相続税の申告期限のギリギリに報告してきたので、慌てさせられました。今、税務調査があり、その他にも生前に金銭の贈与があるとの疑義が発生しております。勿論、相続税申告書作成時に生前贈与がないかと問い合わせをしているにも関わらず、後日の生前贈与のあったとの報告です。

事件その6

事業承継者を、まだ決めかねている状態の会社であるが、自社株は実質婚状態のカップルが所有しているが、入籍がまだなので私署遺言書で自社株だけは、お互いに相続する内容の私署遺言書を作成して保管をしています。もし、入籍の前にどちらかの相続開始した場合、経営能力のない親族に自社株が相続されると、面倒な事態となる事を防止するためです。

もし戸籍を入れてその後に配偶者の税額軽減の適用と、お互い会社の自社株だけは、夫婦どちらか早く相続開始しても自社株だけは、相続する旨の私署遺言書も作成して準備しています。早く入籍して、お互いが「配偶者の税額軽減」の適用もあるので、入籍して公正証書遺言を作成することを願っています。

事件その7

遺言書の認知が進行しないうちに公証人役場での、公正証書遺言書の作成の立会人として赴きました。その遺言者は、私の事はよく知っているのですが、公証人から関係を聞かれたら名前を忘れてしまい、公証人も困り、たまたま娘さんが同行していたので、同席してもらい何とか公正証書遺言書の作成は完了しました。認知が進行しないうちの、遺言書の作成をお勧めします。

事件その8

私署遺言書の内容が、全財産を長女に相続されるという内容でありましたが、長女が母に書かせたと思われるくらい、被相続人の母が自分の名前も手が震えて書いたと思われる筆跡のものでした。

この母は、認知症が進行していたと私署遺言書の作成時に正常な判断できないと、又は脅迫して作成したと私署遺言書の無効の訴えもかんがえましたが、他の兄弟の法定相続人は常識人であったので、遺留分減殺請求で訴訟する事となった。

その後、この長女は他の法定相続人には、六分の一の金銭で分配することで和解したが、結局は相続した不動産を譲渡しなければならず、譲渡の所得税、弁護士費用、無駄な労力、時間、精神的な負担を考えると、お互いに分割協議書を作成した方が、良かったと思います。

事件その9

最初の公証人役場での公正証書遺言作成には、立会人としてお世話いたしました。実子とは確執もあたったと本人は感じたのか、全財産を実子の二人でなく、その子供の孫に遺贈するという内容でした。相続開始した場合には、実子二人で分割協議書を改めて作成してくださいと考えておりますが、その後最初の公正証書遺言を撤回したいという事で安堵しておりました。この二回目の公証人役場に立会人として再度立ち合いました。二回目公証人役場での立ち合いから、数日後に階段から転げ落ち大怪我をして、救急車を自分で呼んだくらい、気丈な人で、几帳面すぎるような人でしたので、怪我から一週間もしないうちに、自死したのです。

何か虫の知らせなのかなと複雑な気持ちとなりました。

事件その10

配偶者の妻に全財産を相続する内容の公正証書遺言を残しておりましたが、実子の娘の一人が母に「遺留分減殺請求権」を起こしましたので、十二分の一を分割しました。

母も公正証書遺言を作成して保管しておりますが、娘の主人、孫を養子縁組により、また実子の妹の娘から遺留分減殺請求されても、法定相続人により、請求割合を減額されるように対抗しております。

この娘さんは、家族の縁も切っても、財産が欲しかったのではないでしょうか?

事件その11

先祖代々からの土地もあり、三人姉妹であるので、長女は養子縁組により配偶者の夫を迎え実子一人がいます。ところが、夫は精神的な病気により、自宅に閉じこもり薬による副作用もあり夫には相続させたくないので、「遺留分減殺請求」されても、実子に相続させるという内容の「私署遺言書」を事務所であずかっていました。私署遺言書の作成し直しで、実子の相続と、妹に遺贈を追加する内容に書き直す事として、さらに実子も万が一の相続に備え、実母への相続、叔母への遺贈と内容の「私署遺言書」を作成しました。

事件その12

事業を一代で築き上げた実母は、母子一人の息子さんがいますが、息子さん夫婦には子供がいないので、息子の相続が開始すると、一人息子なので全財産が、血縁関係のない妻の配偶者が相続することとなり、妻の配偶者の血縁関係のない親族に財産は移動することとなります。実母からすると、嫁と確執があるので、たまらなく精神的に苦しめられることとなります。では、離婚すると多大な慰謝料を請求されることとなりますので離婚も出来ないこととなりのます。息子夫婦に子供がいると、まだ子供に相時相続されるので、子供は鎹(かすがい)なのです。子供のいないご夫婦で、兄弟姉妹のいる人は、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人となるので、お互いに配偶者に相続する内容の遺言書を作成しておくと、兄弟姉妹には遺留分減殺請求は出来ませんので、お互いの配偶者に財産は相続できますので、安心できます。

 御子息には、腹違いの兄弟にいることが判明して妻の妹、甥っ子を養子縁組して、この腹違いの兄弟を法定相続人から除外した妻の行動には、驚きました。

相続は争族であり、親族一族の滅亡に向かっていくものです。財産があるから、取り合いで揉めるので、ほどほどに。金の貯金より、心の貯金を。

本来財産は自分で築き上げるものです。

令和6年9月30日

小関勝紀